ブドウとバターナッツ

毎年9月の始めに行われる、我が家のぶどう狩り。


今年は仕事で帰れなかった。
ブドウ狩りをした後は必ず、
レセプションガーデンでランチをして、
帰りに通る道の駅みたいなところで地元の新鮮野菜をたっぷり買い込む。

素朴だけれど、この上ない幸せ。

そんな思いができなかった今年の私に
かーこはちゃんと荷物を送ってくれた。

かーこから届いたその荷物の中には
ブドウの他にいろんな野菜が入っていた。

ブドウは一粒一粒とってもボリューム感があって、
味が濃くて、あーこれこれと納得する。
毎年、間違いなくおいしい。


その他の野菜の中にバターナッツも2個。
そう、このバターナッツ。
今ではちょっとこだわりの野菜を置いている八百屋さんとか、
デパ地下で普通に目にするようになった。

決して安い値段では売られていないこのカボチャは、
地元では100円ぐらいでゴロゴロしている。


ぽってりと下が丸くなったひょうたんみたいで愛らしいこのカボチャは、
蒸かすと皮まで柔らかくなってとても甘い。

去年行ったポルトガルパウロのお店のキッチンにも転がっていて、
何に使うのかと聞けば
ジャムにしてマカロンに挟んでいた。

甘味たっぷりのバターナッツはそう、
砂糖をほとんど加えなくても十分に甘い。
なるほど、世界が違えばいろんな使われ方をするのねと
感心してたっけ。


近年、新しく目にする野菜が増えてきたなーと思っていた私。
ポルトガルでのバターナッツとの出会いは、
さてこりゃどこからどう伝わったのか、お野菜の世界巡り。
おもしろいなーと思っていた。



そんなある日、あたしは押入れ掃除をしていて、旅日記を見つける。

初めて海外へ旅行したのは、19歳の夏だった。
一人で飛び立ったアメリカ。
思い付きのホームステイ。
ふと、懐かしくなって読んだ旅日記には
毎日のご飯が丁寧にカラーの絵付きで書いてあった。


私のステイ先は学校まで徒歩10分。
ママとはパパは弁護士と教師で、プール付きのそれはそれはきれいな家だった。

後から聞いた話では、わたしのホームステイ先はかなり恵まれていて、
みんなが1時間以上かけて登校していたり、若
い夫婦が小金稼ぎで受け入れていて、
毎晩カップ麺が夕食だったらしい。

それでも毎晩出てくるご飯は、決して美味しいとは言えず、
にんじん、レタス、ジャガイモ、味のない肉のかたまり。


その食卓にはありとあらゆるソースや調味料が並んでいて、
各々お皿の上で最終調理をする感じ。
ケチャップやらマヨネーズやらをかけて、自分好みの味にして頂くのだ。

アメリカに行けば太ると思っていたけど、
あまりにたべたいものがなさすぎて、というかきっと
美味しいものはどこかにあったんだろうけど、
たどり着けなくて、帰ってきたら痩せていたっけ。


そんな生活のなかで唯一わたしが絶賛していたものがあった。


それがまさかのバターナッツだったとその時初めて気がついた。



巡りめぐる記憶。




その日ドカンと出されたその初めてみる食べ物は
それはそれはおいしくて、一体なんだこれは!と衝撃を受けたんだっけ。


マザーに聞いたらカボチャと言われて、
その日の日記はカボチャのことでいっぱいだった。


とか言って、そんなに感動したわりに
私は何年か後に出会ったバターナッツに
そのカボチャを結びつけることができなかったんだけど。

まぁ、まさか見た目がこんなだとはあの時想像もつかなかったわけで。。



バターナッツ、あの頃からアメリカにいたのよね。
ポルトガルにはいつからいて、日本にはいつからいたのかしら?
私の地元の農家さんがゴロゴロ作るようになったのはいつからかしら?


とにもかくにも、
美味しいバターナッツに私は世界を思い、
胸をドキドキさせたのでした。





そんなわたしの頭のなか。